【舛添要一が語る世界と日本】 ウイルス変異の可能性大 政府の調整能力が要だが……

【舛添要一が語る世界と日本】 ウイルス変異の可能性大 政府の調整能力が要だが……

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、安倍首相は、4月7日に緊急事態宣言を発出したが、これは国民に感染防止対策を徹底するように、心理的圧力をかけるのが目的である。

 欧米では、外出する際に許可証を携行することが求められたり、違反すると罰金が科されたりするが、日本ではそのようなことはない。

 対象となっているのは、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡の1都1府5県であるが、宣言の効果があって、東京でも大阪でも繁華街はゴーストタウンのような状況になっている。

 京都府や愛知県も、緊急事態宣言の対象に指定することを国に要求しているが、日本列島各地、特に人口が密集する都市部で感染が拡大している。

 さらに、北海道では、12日に新たに12人がコロナに感染、これまでの感染者累計は267人になっている。感染者数が5日連続で2桁になったのであり、これは第二波が到来したと考えてよい。

 危機感を持った道と札幌市は、「緊急共同宣言」を出して、不要不急の外出の自粛などを要請した。ワクチンを開発するということは、集団免疫を作るということであるが、それができない間は、水際作戦を続けないかぎり、第二波、第三波の可能性があるということである。

 4月8日には、2ヶ月半ぶりに武漢の封鎖が解除されたが、中国でも、同様な可能性を認識しており、水際作戦を緩めようとはしていない。12日には、新たな感染者が108人と、38日ぶりに100人を超えたが、ロシアなどからの帰国者が持ち込んだものという。

 その関連で注目されるのは、ウイルスが変異を遂げている可能性が高いということである。

 海外での研究成果によると、武漢で発生したウイルスは、その後様々な変異を繰り返しており、アメリカで今流行しているのは、武漢からのものではなく、ヨーロッパから持ち込まれてもので、特質も違うという。

 陽性と判定された阪神の藤浪や森三中の黒沢かずこは、嗅覚喪失の症状が出たが、この症状は中国では報告されていなかった。その後に蔓延した欧米で報告されたが、藤浪や黒沢は、欧米発のウイルスに感染したものと思われる。

 ウイルスは、人間との戦いを続けるうちに、次第に強くなってきており、若年層が重症化するケースも報告されるようになってきている。このウイルスは相当に厄介者である。

 全てのウイルス特性が明らかになったわけではないが、とりわけ人類に大きな打撃を与えているのは、2週間という潜伏期間の長さである。インフルエンザは1~3日であり、しかも症状が出ないうちは他人に感染させないが、今回のコロナウイルスの場合、無症状でも感染力があるのである。

 誰かが要請と判定されると、その周辺で濃厚接触者とみなされた人は、2週間は自己隔離する必要があり、その間は経済活動にも社会活動にも参加できなくなる。要するに、2週間、時間が止まってしまうのである。

 休業すると、その間の所得をどのようにして確保していくかという問題が起こってくる。

 政府や地方自治体が、強制力を持つ命令を下さないのは、それに伴う損害賠償を負担しなければならなくなるからである。

 7.3兆円という一般会計予算を誇る東京都は裕福であり、地方交付税不交付団体である。まさに別格であり、緊急事態宣言の対象となった他の1府5県とは雲泥の差があるので、独自の休業補償が可能なのである。

 しかし、地域によって差が出るのは好ましいことではない。そもそも、地方交付税交付金は、国の介入によって地域間格差を埋める仕組みであり、今回も問われているのは、国の調整能力である。

 休業業種の指定に3日間もかかっており、業種間の不公平など様々な問題が既に指摘されている。今後、政府の経済対策について、国民の間で不公平感が募るようであれば、ウイルスとの戦いに不可欠な連帯の精神が損なわれていく。

 2枚の布製マスクを配布するという「アベノマスク」騒動に続いて、星野源との動画も批判を呼んでいる。世論の動向を読み取る官邸の能力は、かなり低下しているようだ。

(文中敬称略) 舛添 要一 (国際政治学者)

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